お子様の卒業式という大切な節目。「せっかくの晴れ舞台だから、日本伝統の着物で参列したい」と考えるお母様は多いものです。しかし、その一方で頭をよぎるのが「着物で行くのはやりすぎだろうか?」「周囲の保護者から浮いて、目立ちたがり屋だと思われないか?」という不安ではないでしょうか。
結論から申し上げますと、卒業式に着物で参列することは、決してやりすぎではありません。着物は日本の正装であり、式典の格を上げ、お子様への祝意を表す最高の方法の一つです。
ただし、選び方や着こなしを一つ間違えると、確かに「場違いな華やかさ」になってしまうリスクがあるのも事実です。この記事では、プロの視点から、卒業式で「やりすぎ」に見えないための具体的なチェックポイントと、上品に美しく装うためのテクニックを詳しく解説します。
卒業式の着物が「やりすぎ」に見える本当の理由
なぜ、同じ着物姿でも「素敵なお母様」に見える人と「少しやりすぎでは?」と感じさせてしまう人がいるのでしょうか。その差は、着物自体の良し悪しよりも、卒業式という「場の空気」とのミスマッチにあります。
卒業式は入学式とは異なり、お別れの場であり、厳粛な式典としての性格が強い行事です。そのため、結婚披露宴のような「主役を華やかに祝うための装い」をそのまま持ち込んでしまうと、周囲との温度差が生まれてしまいます。
「やりすぎ」という印象の正体は、主に「色・柄の分量」「小物の光沢感」「ヘアメイクのボリューム」の3つのバランスが崩れたときに発生します。これらを卒業式のトーンに合わせて「引き算」していくことが、失敗しないための最大の秘訣です。
【種類別】卒業式で絶対に失敗しない母親の着物選び

卒業式にふさわしい着物には、明確な「格」があります。まずは、どの種類の着物を選ぶべきかを整理しましょう。基本的には「訪問着」「付け下げ」「色無地」の3つが適しています。
訪問着:華やかさと品格を両立する定番
卒業式で最も一般的なのが訪問着です。肩から裾にかけて絵羽(えば)と呼ばれる連続した模様があるのが特徴です。やりすぎを防ぐには、柄が全体に入っている「総柄」よりも、裾の方に重心がある落ち着いたデザインを選ぶのがコツです。特に、金彩や刺繍が多すぎるものは避け、友禅染などの柔らかな風合いのものを選ぶと、母親らしい優しい印象になります。
付け下げ:控えめながらも知的な印象
訪問着よりも柄の分量を抑えた「付け下げ」は、実は卒業式に最もおすすめしたい種類です。模様が縫い目をまたがないように配置されており、訪問着よりもスッキリとした印象を与えます。派手さを抑えつつ、着物ならではの特別感も出せるため、「目立ちたくないけれど上品でありたい」というお母様に最適です。
色無地:最も堅実で失敗のない選択
柄のない一色染めの「色無地」は、最も控えめで厳粛な式典にふさわしい装いです。背中に一つ紋が入っていれば準礼装となり、格としても申し分ありません。地味になりすぎるのが心配な場合は、帯や小物で少しだけ華やかさを添えることで、洗練された「大人の美しさ」を演出できます。
一方で、絶対に避けるべきなのは「振袖(未婚女性の正装)」や「黒留袖(結婚式での親族の装い)」です。これらは格が合わない、あるいは用途が異なるため、明らかなマナー違反として「やりすぎ」を超えた「間違い」となってしまいます。
やりすぎを回避する「色・柄」の黄金バランス

着物の印象の7割は「色」で決まります。卒業式でやりすぎに見えないためには、色の彩度を一段階落とす意識を持つことが大切です。
おすすめは、春の訪れを感じさせつつも落ち着きのある「ニュアンスカラー」やくすみ感のある色合いです。具体的には、淡いグレー、薄紫(藤色)、灰桜色、ベージュ、納戸色(落ち着いた青緑)などが、会場の照明や周囲のスーツ姿とも馴染みやすい色です。
反対に、真っ赤や鮮やかなピンク、ビビッドな黄色などは、体育館や講堂という広い空間で想像以上に目立ってしまいます。写真に撮った際も、お子様よりも色が主張してしまうため、避けるのが賢明です。
柄については、季節感を意識しつつも「古典柄」を選ぶと間違いありません。桜、梅、橘、松竹梅などの吉祥文様は、お祝いの席にふさわしく、誰が見ても安心感のある柄行きです。大輪の薔薇や蝶など、モダンで個性が強すぎる柄は、パーティーのような印象を与えてしまうため注意が必要です。
帯と小物の合わせ方で「品格」をコントロールする

着物そのものが控えめでも、帯や小物の選び方次第で「やりすぎ」に見えてしまうことがあります。卒業式においては、小物は「調和」を目的として選びましょう。
帯は、金銀の糸が使われた「袋帯」を合わせるのが基本です。ただし、金ピカに輝くような華美なものではなく、マットな質感の金や、白地・銀地の落ち着いたものを選ぶと、着物とのバランスが取りやすくなります。
帯締めや帯揚げといった小物は、着物の色の中から一色取って同系色でまとめるのが、最も上品でやりすぎ感が出ない方法です。アクセントとして反対色を入れる手法もありますが、卒業式では「馴染ませる」ことを優先してください。
草履とバッグについても、布製のエナメル加工されていないマットなもの、あるいは上品な光沢の革製を選びます。あまりに高いヒールの草履や、ブランドロゴが大きく入った洋装バッグは、着物姿の調和を乱す原因となります。
意外な盲点!ヘアメイクと着付けによる「やりすぎ感」の正体

多くの人が見落としがちなのが、着付けとヘアメイクによる影響です。実は、着物自体は地味でも、この部分が派手だと「やりすぎ」という印象を決定づけてしまいます。
まずヘアスタイルですが、夜会巻きを大きく高く作りすぎたり、カールを強く出した盛り髪にしたりするのは、今の時代では少し古い印象を与え、かつ「気合いが入りすぎている」と見られがちです。耳より下の位置でまとめる「低めのシニヨン」や、面を整えた落ち着いたアップスタイルが、現代の卒業式には最もフィットします。髪飾りも、大ぶりな造花ではなく、パールのピンや小ぶりなかんざしを1点添える程度に留めるのがスマートです。
メイクについても、着物を着るからといって厚塗りや派手な色使いにする必要はありません。着物に負けない程度の「血色感」は大切ですが、目元はマットに、口紅は肌馴染みの良いローズやベージュ系を選ぶと、清潔感のある母親像を演出できます。
さらに、着付けの「衣紋(えもん)」の抜き加減にも注意が必要です。首の後ろを拳一つ分以上大きく抜いてしまうと、色気が出すぎてしまい、学校行事には不向きな印象になります。あくまで「きちんと感」を重視した、控えめな着付けをリクエストしましょう。
【学校別】周囲の視線と「浮かない」ための事前リサーチ術
「やりすぎ」かどうかは、最終的にはその学校の雰囲気によって決まります。後悔しないために、以下の3つのポイントを事前に確認しておくことをお勧めします。
- 昨年の卒業式の写真を確認する 学校のホームページやブログ、SNSなどで、昨年の式典の様子をチェックしてみてください。着物の保護者がどの程度いるのか、どんな色合いが多いのかを知るだけで、大きな安心材料になります。
- ママ友や先輩ママに聞く 「毎年、各クラスに2〜3人は着物の方がいるよ」といった具体的な情報があれば、迷いも消えます。もし「誰も着ていない」という特殊な環境であれば、より控えめな色無地などを選ぶなどの対策が取れます。
- 私立か公立かを見極める 伝統ある私立校や国立校などの場合、保護者の装いに一定の「暗黙のルール」が存在することがあります。逆に自由な校風の公立校では、あまり神経質になりすぎなくても良い場合が多いですが、いずれにしても「目立ちすぎない」というスタンスは共通です。
もし当日「浮いたかも」と不安になったら?
念入りに準備しても、当日会場で「思ったよりスーツの人が多いな」「自分だけ目立っている気がする」と不安になることもあるかもしれません。そんな時に思い出してほしいのは、「着物を着ていることで、あなたのお子様に対するお祝いの気持ちが最大限に表現されている」という事実です。
着物は、準備に時間も手間もかかります。それだけの労力をかけて参列する姿は、お子様にとっても、そして実は周囲の先生方や保護者にとっても、「丁寧で素晴らしい」と映るものです。「浮いている」と感じるのは、裏を返せば「素敵だから注目されている」ということでもあります。
背筋をピンと伸ばし、柔らかな微笑みを絶やさずにいれば、それは「やりすぎ」ではなく「堂々とした気品」に変わります。他人の視線を気にして縮こまってしまうのが一番もったいないことです。自信を持って、その日一日を楽しんでください。
自信を持って、最高のお祝いを

卒業式の着物姿が「やりすぎ」に見えないためのポイントをまとめました。
- 着物の種類は「訪問着」「付け下げ」「色無地」から、控えめな柄のものを選ぶ。
- 色は彩度を抑えた「くすみカラー」や「淡いトーン」で、周囲と調和させる。
- ヘアメイクや着付けは「引き算」を意識し、清潔感と上品さを最優先にする。
- 学校の雰囲気を事前にリサーチし、当日は自信を持って堂々と振る舞う。
これらのポイントを意識すれば、周囲に「やりすぎ」と思われる心配はありません。むしろ、お祝いの席にふさわしい、凛とした美しい母親の姿として、お子様の記憶にも深く刻まれるはずです。
お子様の門出という一生に一度の記念日。あなたが選んだ最高の一着で、心からの「おめでとう」を伝えてあげてくださいね。
いかがでしたでしょうか。この記事が、卒業式の着物選びに悩むお母様方の背中を少しでも押すことができれば幸いです。もし、より具体的なコーディネートや、着物のメンテナンスについて詳しく知りたい場合は、関連記事もぜひ参考にしてみてください。
